共に食ってく?

主に映画を食べます

ハートフル飯テロの爆弾『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』

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監督

ジョン・ファブロー

キャスト

ジョン・ファブロー

ソフィア・ベルガラ

ジョン・レグイザモ

スカーレット・ヨハンソン

ダスティン・ホフマン

ロバート・ダウニー・Jr.

製作

ジョン・ファブロー

セルゲイ・ベスパロフ

 

あらすじ

ロサンゼルスの有名レストランで総料理長を務めるカールは、口うるさいオーナーや自分の料理を酷評する評論家とケンカして店を辞めてしまう。心配する元妻イネスの提案で、息子パーシーを連れて故郷のマイアミを訪れたカールは、そこで食べたキューバサンドイッチの美味しさに驚き、フードトラックでサンドイッチの移動販売をすることを思いつく。カールはイネスやパーシー、仲間たちの協力を得て、マイアミからニューオリンズ、ロサンゼルスへと旅を続けていく。(映画.com様より引用)

 

 

感想

監督は『アイアンマン』でハッピーを演じたジョン・ファブロー。そして監督であるジョン・ファブロー自らが主人公を演じ、自らが料理をこなしている。余談だが本作にはロバート・ダウニーJr.もチョイ役で出演している。

 

人生の分岐点。辛いとき苦しいとき死にたくなったときでも何か希望が、救いが、きっかけがあれば閉ざされた闇に微かな光が刺す場合もある。いや指してくれる。それは次第に大きくなり、やがて全身を包み込んでくれるだろう。

今回紹介する『シェフ 三ツ星フードトラックはじめました』はまさに暗闇に堕ちた主人公が一つの転機により光を取り戻していく内容になっていて私は凄く好きだ。まさしく人生という感じがする。

 

シェフ自らが考案した料理をホテルのオーナーに拒否され、自信作では無い料理を評論家に振る舞い酷評されてしまい、評論家とシェフの間のいざこざのはずがやがてSNSを通じて世界的に広まり、窮地に追い込まれる。

しかし、元妻、そして息子やその他大勢の力を借りてキューバサンドのフードトラックを始めてドン底から這い上がる姿をハートフルに描いた作品だ。

 

まず何が辛いか、それは自分が築き上げた実績を他人に潰されるのだ。自分でならまだしも他人だ。自身が掴んだものを否定されれば最早何が正しくて何が間違いか、それさえ不安になる。

しかし料理だけは裏切らない。自分で肯定し、積み上げてきたものが実力として確かにここある。なので本作で描かれるシェフの料理に対する熱い思いが随所で語られ視聴者に投げかけグッと心に迫ってくる。

 

何より本作。登場人物どれもが人情に溢れていて見ていて凄く気持ちが良い。シェフと元妻と息子の関係性は少し複雑だが決して居心地の悪い関係ではなく、悩みや相談を聞いてくれる良き仲といった形。他にも友人やその他大勢がシェフに温かい手を差し伸べてくれ助けてくれる様子はザ・ハートフル一辺倒といった具合だ。なので序盤のシェフが窮地に追い込まれる場面も含めラストまで何一つ嫌な気持ちにはならないのも魅力の一つと言っていいだろう。

 


この作品、今や日常には欠かせない媒体と言っても等しいSNS。そのSNSの拡散力をテーマに織り込んであるのが印象深い。そもそもシェフのクビの発端がブロガーとのSNSのやりとりと拡散によって招かれた悲劇であり、少しの誤った発言により瞬く間に煙が上がり炎上していく様は今ならではの怖さやメッセージ性がある。そしてネットに流れる情報の信用度は大きいことがこの作品では随所に描かれている。

 


しかし、そんな悲劇だけでは終わらせず、フードトラックを始めた際の集客の方法としてSNSを活用しているのも実に面白い。その瞬く間に拡散される口コミやバズりを利用した集客は実にイマドキ風である。そして、それを上手く活用しているのがイマドキの息子の方なので、料理一択でネットやSNSに関して無頓着なシェフである父親との掛け合いもジェネレーションギャップを感じさせて面白く、それによってまた更に深くなっていく親子関係も見ていて微笑ましくなる。

 


言うまでも無いが本作に登場する料理の数々、そのどれもが超絶美味しそうなのが最大の魅力である。食材を切る工程から、調理や焼きや盛り付けに至るまでとことん過程を見せ付けることで体をすこぶる刺激させられる。

これほどまでに何故映像から匂いは感じられないのかと無茶苦茶な事を思って地団駄踏む映画もそうそう無い。それほど本作に登場する料理はどれも美味しそうなのだ。食指が動かされまくりである。そして本作に登場するキー料理のキューバサンド。鑑賞中も見終わったあとも必ずキューバサンドが食べたくなること請け合いだ。

 


人生もまた様々なスパイスを加え、味付けされ完成されていく料理のようなものなのかもしれない。

ということで『シェフ 三ツ星フードトラック』是非落ち込んだときに見てほしいし是非誰かと見て欲しいと思う。この映画で何かが変わるとは思わないが、何か見つけられたら筆者は心から嬉しく思う。

 

さてキューバサンド食べるか、、、f:id:tomoguizonbi:20191123192219j:image

見た目は美しくも中身はドス黒い 『ジェーン・ドウの解剖』

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監督

アンドレ・ウーヴレダ

製作

フレッド・バーカー

エリック・ガルシア

ベン・ピュー

ロリー・エイトキン

キャスト

エミール・ハーシュ

ブライアン・コックス

オフィリア・ラビボンド

 

あらすじ

バージニア州の田舎町で息子のオースティンとともに遺体安置所と火葬場を経営するベテラン検死官トミー。ある夜、保安官から入った緊急の検死依頼は、一家3人が惨殺された家屋の地下から裸で発見された身元不明女性、通称「ジェーン・ドウ」の検死だった。解剖を進めていく中で、遺体に隠されたある事実が判明し、閉ざされた遺体安置所にさまざまな怪奇現象が発生する。( 映画.com様より引用)

 

 

私だよ。太陽の日差しとそれにより熱されたコンクリートの熱気、鳴り止まない蝉の声、延々と立ち込める陽炎が心身共に少ない体力を奪っていく呪いの季節、夏。

そんな夏も遠くに歩いて行き、後ろから近づいてきた秋の季節だがまだまだ残暑が残る。

なので、今回は少し早めに涼しくなってもらうためにホラー作品を一つ紹介しようと思う。

 

実際ホラーは科学的に体を少しだけ涼しくする効力があると証明されているらしく、火照った身体には恐怖が持って来いである。

ということでひと時の納涼と恐怖をお届けするに相応しい一本ジェーン・ドウの解剖という作品を今回は紹介していこう。

 

そもそもジェーン・ドウとは何なのか。

ジェーン・ドウとは身元不明の女性の遺体のことを指す。因みに男性の場合はジョン・ドウと呼ぶらしい。

今作はその身元不明の女性の遺体、つまりジェーン・ドウから成る恐怖を描いた作品だ。

監督はまだ割と記憶にも新しい『トロール・ハンター』のアンドレ・ウーヴレダル監督

トロール・ハンター』も怪獣映画としても非常にワクワクする楽しい作品なのでこの場を借りてオススメしておこうと思う。

 

さて本題に戻ると個人的にはこの作品、結構怖く気に入っているホラー映画だ。

遺体安置所に運ばれてきた身元不明の遺体。外傷はなくあまりに美しい遺体に疑問を抱きつつメスが入った途端、突如として怪異が襲うという絶対に居たくない場所で絶対起こってほしくないことが起こるのだ。

やはりホラーは恐怖演出も大切だが、その恐怖をより一層際立たせる「場所」も重要になってくる。そういった点で「場所」に置いては文句なしなのでは無いだろうか。

遺体安置所を扱ったホラーは他にもあるが、本作はその場所の使い方が見事なのだ。

 

起こる怪異によって出口を塞ぎ、自然と遺体安置所一択という出口の無い密室へと持っていき、そのロケーションのみに抑えた逃げ場の無いホラーな現象が矢継ぎ早に従業員と視聴者を恐怖のどん底へと叩き落としていく。

 

もの言わぬ真っ白で傷一つない死因不明の美しい遺体が語り出す恐怖、そして謎、謎、謎。。電気が消えたり付いたりなど小さな違和感から始まり、遺体の解剖を進めれば進めるほどその底知れぬ闇は更に深さを増し、同時に解剖していく遺体も肺は真っ黒だわ舌が無いわ陣が描かれた意味不明な布が出てくるわ挙げ句の果ては燃やすことも出来ないと謎が深まるばかりに怯えつつ、メスを入れると顔を出す恐ろしい真相に見たくないけど、その目で思わず確かめたくなってしまう。

 

また遺体安置所という最悪の場所なので、遺体が保管された何処となく不気味で寒々しい雰囲気と血生臭さが漂うシチュエーションに自ずと寒気と緊張感が身体を蝕むのも、また怖さを一枚厚くしていると言っても良いだろう。

 

本作、何が怖いか、それは遺体安置所という普段日常的に踏み入れない。というか踏み入れたくない場所の道具やセットと遺体の検死や包み隠さない解剖シーンといったリアリティのある描写などガチ過ぎる検死現場を見せている。

それだけでもリアルでは立ち会えないリアルな検死や解剖に魅入ってしまうものがあり、何も起こらない前半でさえ寒気と緊張感を視聴者に与え、それを上手く利用した怪異が巧妙で非常に完成度の高い恐怖を生み出していると言える。

たとえば、もともと遺体安置所に保管されている足首に鈴の付いた遺体や顔面ゼロ距離からショットガンを食らった遺体などの存在が伏線となり、後半に活きてくる演出は、定番だがそのリアリティあるロケーションと解剖の様子も相まって芯から震えるものになっているのだ。

特に足首に鈴の付いた遺体。何が怖いって本来鳴るはずがないのに鳴るのだ。ありえない状況とありえない所から……。

そういった恐怖が最後まで持続するので、気を抜くことが許されない。

 

そして全ての元凶であるジェーン・ドウの隠された秘密。それに踏み入っていくミステリー要素もまた本作の楽しめる要因の一つだろう。

遺体は口を開かないのに、メスが入るたび語っていき、更にその語っていくものがどれも理解不能で全くもって謎すぎる点で気持ち悪さが増すばかり。人は理解できないものや存在に恐怖を覚えるものだ。理解できない謎、理解できない恐怖を本作は畳み掛け、投げかけてくる。

そしてパズルがハマっていくように徐々に明白にになっていくジェーン・ドウの正体とドス黒い真実。それが明かされたとき、理解したときに待ち受ける恐ろしさは尋常じゃない。

正体を知った時は思わずそれについて調べたくなることだろうと思う。是非その目で確かめて欲しい。

あと遺体のリアルさ。本作に登場する遺体は作り込まれた人形だが細部まで拘ったディテールはまるで本物の遺体を扱って解剖しているような感覚に陥っていく。まさに芸術的で匠の技。

更にもう一つ言うと本作、上映時間が90分以内というのが良い。ホラーはそれくらいの時間で纏められた方が見やすい。それも本作を推す一つの利点である。

 

ということで『ジェーン・ドウの解剖』ちょっとした納涼を感じたい方には凄くオススメである。

荒唐無稽に近いお話だが、Where(どこ)Who(だれ)When(いつ)What(何)Why(なぜ)の全ての5Wが揃ったミステリーとホラーが上手く絡み合い組み合わされた質の高い作品に仕上がっていることは間違いない。

解剖シーンも躊躇なく見せつけてくるので、グロいのが苦手な方には懐から軽くは出せないが、その怖さは一級品だろう。

 美しいものには棘がある。これに尽きる。

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ゾンビ×ミュージカル×おっぱい=ハッピー 『アナと世界の終わり』

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監督

ジョン・マクフェール

製作

ネイサン・アレイ=カルー

ニコラス・クラム

トレイシー・ジャービス

キャスト

エラ・ハント

マルコム・カミングス

サラ・スワイヤー など

 

あらすじ

イギリスの田舎町リトル・ヘブン。幼い頃に母を亡くした高校生のアナは、現在は父トニーと2人で暮らしている。夢も希望もないこの町にうんざりしている彼女は、父に内緒でオーストラリア旅行を夢見てバイトに励む日々を送り、幼なじみのジョンは、そんな彼女の夢を応援しながら密かに思いを寄せている。しかしクリスマスイブに旅行の計画がバレてしまい、アナと父は大ゲンカに。翌日、いつも通り学校へ向かっていたアナとジョンの前に突如として血まみれの男が現れ、ジョンに襲いかかる。アナは咄嗟にシーソーを使って男を撃退するが、なんと男の正体はゾンビだった。クラスメイトたちと合流したアナとジョンは、学校に取り残された学生たちを救出しに向かうが……。(映画.com様より引用)

 

 

 

感想

私だ。今回は世界三大映画ジャンルの一つでもあるゾンビ映画に歌と踊りを加えてなんとも景気の良い黙示録になっている青春ゾンビミュージカル『アナと世界の終わり』だ。

なんだか聞き覚えのあるタイトルだが決して、ありのままの姿を見せるやつではない。血肉は出るけど。

 

今作のゾンビ映画、なんと言っても特筆すべきはミュージカルというゾンビ映画とは無縁にも等しいジャンルを取り入れ、勝負に出ているところだ。ゾンビ×ミュージカル、果たしてどうなのかと言うと正直めちゃくちゃ良かった。そう凄く良かった。

 

主人公であるアナと父親の思春期ならではのギクシャクした関係を映した場面から始まり、学校パートでは映画のヒロインたちをフォーカスしたハイスクールミュージカル張りの激しい歌とダンスが披露され、思わず「これ本当にゾンビ映画を見ているのか?」と不思議な気持ちにさせられる。

主人公のアナから始まり、クソダサセーターを着た恋真っ盛り中の青年、GIDで学校に今ひとつ馴染めない男の子、学校のクラス内カーストで上位の陽キャ集団のリーダー、アナとは親友以上恋人未満の存在、皆が思う「こんな校長は絶対嫌だ」を詰め合わせた理想的傲慢な校長など出てくるキャラクターも非常に立っており一人一人に魅力や見せ場があるのも感情移入がしやすく良かった。

 

特に校長は私欲のためならどんな醜い行動でもやってのけるゾンビよりゾンビみたいな厄介な存在というのも面白く、校長が歌う曲はエゴに満ちた黒い曲で自分のキャラをしっかり分かっていて素晴らしかった。

 

突如訪れた黙示録で血肉が町に飛び散ろうとも構わず、歌と踊りで景気良く見せながら曇り空でもどこか華やいで見え、危機感は皆無だが生ける屍を超えていくとティーンエイジャーの有志と、アオハルかよな青春は最高の域にある。

そしてミュージカルでありながらもしっかりゾンビ映画の様式美も揃っているのは好感が持てる。たとえば、ある建物に籠城し、その中で対策を考えたり、特殊部隊が助けに来てくれるという謎の信頼感と希望からねじ伏せる絶望や、夢を語ったやつから死んでいったり、大切な人を助けにいく設定なども然りだ。

ゾンビ映画での人を喰らい肉を貪る最低限なゴア描写も満足で見応えもかなりあり、その中で披露される歌やダンスが邪魔などはせず見事に映画を一枚面白いものにしているのは純粋に凄いと思う。

 

また今作はショーン・オブ・ザ・デッドのようなその場にあるヘンテコなものでリズミカルにゾンビを殺していったり、ちょっと間抜けで完全に笑わせに来てるゾンビなど楽しい一面が多々あるのだ。ボーリング場でのゾンビ集団バトルは本当に笑った。

かといってポップでコミカルな全編晴れ晴れしたゾンビ映画になっていると思えばそうではなく、所々ホロッと泣かされる場面もあり、上記にも記した通りヒロイン一人一人に感情移入がしやすくなっているので……っとこれ以上言うとアレなのでここまでにしておくが、とにかく自分は涙腺が弱いので普通に泣いた。劇場の隣で見ていたお姉さんも大号泣である。

 

 

更に個人的この映画のもう一つの魅力、それはそうおっぱいである。

主人公のアナの鎖骨から腰にかけて妙にパツパツで、引き締まり発達したくびれまでのボディラインが強調されたシャツと、それにより一段とせり出た胸元のシグナル突起物の乳房、皆が言うところの通称おっぱいのシルエットは世の男性を押し倒し、耳元に息を吹きかけるようなゾクゾクしたものを感じる。シャツ、グッジョブ!

もうここまで語ってたら変態のレッテルをバンバン貼っても良いと思う。剥がすけど

 

正直これに気付いたときは歌とストーリーとゾンビ殺しとおっぱいにしか目が行かなくなってしまい目も耳も大忙しだ。正直こんなものまで見れるとは思っていなかった。

この体のラインが強調された主人公は実にエロい。それが終盤まで続くというハッピーサプライズorラッキースケベ

 

ということで『アナと世界の終わり』、ゾンビとミュージカルとおっぱいで成り立った素晴らしい映画で満足。

劇中で歌う曲もどれも良い曲ばかりで思わず聞き惚れてしまうほど。特に序盤の学校の皆で歌う「映画のようなエンディングはない」という歌陽キャ集団のリーダーが歌う「ゾンビ殺しなら俺が最強、へっへっへ」みたいな歌はお気に入りだ。

ゾンビ映画とミュージカルという異色のマッチングで生み出された本作は超絶楽しい作品になっていてかなりオススメである。

もし終末が来たらこんな感じのノリで危機を回避したい!

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怪獣パーリーピーポー『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』

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監督

マイケル・ドハティ

製作

メアリー・ペアレント

アレックス・ガルシア

トーマス・タル  など

キャスト

カイル・チャンドラー

ベラ・ファーミガ

ミリー・ボビー・ブラウン

ブラッドリー・ウィットフォード

渡辺謙  など

 

あらすじ

前作から5年後の世界を舞台に、モスララドンキングギドラなど続々と復活する神話時代の怪獣たちとゴジラが、世界の覇権をかけて戦いを繰り広げる。また、それによって引き起こされる世界の破滅を阻止しようと、未確認生物特務機関「モナーク」に属する人々が奮闘する姿を描く。(映画.com様より引用)

 

 

感想

私だ。今回はエメゴジ(ローランド・エメリッヒ監督のゴジラ)、ギャレゴジ(ギャレス・エドワーズ監督のゴジラ)に続くハリウッドゴジラ3作目のドハゴジ(マイケル・ドハティ監督のゴジラ)こと『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』である。ゴジラでキングにしてモンスターズという素敵なワードが3つも入ったなんともお子様ランチみたいな豪華なタイトルだ。

 

今作の魅力はなんといっても怪獣が何体も登場することにある。ゴジララドンモスラキングギドラをメイン怪獣に置き、その他にもなんだか凄い怪獣など多種多様に何体も出てくる。ゴリラとマンモスを足したような怪獣、意味不明だけど好きだった。

 

そして怪獣の量だけではなく質も惜しみなく爆発的に起こる。

予告を見てみても、ほとんど怪獣との激しいバトルしか映さない潔い仕様に脳がアドレナリンで沸騰したことと思う。これがマジでバトルの嵐。

怪獣同士はもちろん特殊部隊と怪獣のバトルまで目白押しで、人も街もゴミみたいな扱いのド派手な怪獣プロレスがとことん拝める。

 

しかもメイン怪獣たちのイケメンな見せ場などもしっかり盛り込まれており、ゴジラは勿論、ラドンの誕生から速攻でトリッキーな飛行で戦闘機を撃墜する様や、モスラの「あ、なんか良いことあるかも…」と思ってしまう後光みたいな神々しい登場からの糸を吐き出すハイスピードバトル、キングギドライカつい姿で圧倒的なパワーを見せ、生態系を狂わす異質感だったりと全ての怪獣に惚れてしまう場面を設けてくれている。

そんな怪獣たちのド派手な喧嘩が画面いっぱい、寧ろ収まってないくらいにまで繰り広げられる。心の中で「それだよそれ!それが見たかったんだよ!」と自然に叫んだ、

特にクライマックスのゴジララドンモスラキングギドラのメイン怪獣たちが揃ってのバトルシーンは圧巻。街は公園の砂山を蹴飛ばすくらいの軽いノリでことごとく木っ端微塵に吹き飛び、人間はゴミのような扱いでオープンワールドな破壊的プロレスが激しく繰り広げられる。ここが本当に凄く、手に汗握る大盤振る舞いに圧倒されることこの上ない。最早バカ(褒めてる)。もうそれは怪獣たちによるやりたい放題パーリーピーポーな状態(褒めてる)。

 

ここまで最高な怪獣を見せてくれる中、さて人間サイドのドラマはどうかだが、これが中々に微妙。というか、ん〜なんだか凄い。

我が日の丸を背負ったジャパニーズ・ハリウッドスターの芹沢博士(渡辺謙)のぶっ飛んだ話を持ち出す会議から始まり、登場人物やモナークという組織に所属する人物たちの中で非常に駆け足で事が進み、会話が軒並みぶっ飛んだ話へと持っていく。

怪獣の歴史や神話を掘り下げてから成る謎理論でマトモな大人がマトモじゃないことを淡々と喋るのでスルーしそうになるが、その会話の内容と出される発想は凄い。思わずマジで言ってんのか!?となる。一応申し訳ない程度にグッとくるドラマが用意されているが、やっぱりぶっ飛んでる。(例を挙げるとゴジラに闘魂注入など。何言ってるか分からないと思うがマジである。)

しかし、どんなに人間サイドがアレだとしても本編では常に人間はゴミ、怪獣が正義という概念と扱いなのでそういう立場では怪獣の活躍を見たい私からすると「ありがとう」という気持ちになる。

 

また、今回のハリウッドゴジラは音楽が凄く良かった。

アレンジを加えまくったソイヤ!ソイヤ!なゴジラのテーマソングキングギドラが登場する際に流れる不穏な般若心経ソングなど、大いに盛り上げて怪獣をまた一つ大きく魅せてくれる。エンドロールでは曲の盛り合わせでファンにとっては歓喜に違いないだろう。更にエンドロール後のお楽しみの一つであるCパートはイマジネーションが膨らむ一興として最高の終わり方だったということも伝えておきたい。

 

 

ということで『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』全てが完璧という訳では無いが、求めていたものは確実に見れる。だってみんな怪獣同士が凄いバトルをするのを見たいでしょ。ここにある。

この調子で『ゴジラvsキングコング』を心待ちにしようと思う。『キングコング 髑髏島の巨神』から時間が経ってるので、多分キングコングもまた何周りも成長してデカくなっている筈なので楽しみである。

取り敢えず、キングコングが山や岩などの地形を利用してパルクールなどの俊敏な動きを見せてから、ゴジラに向かって助走ドロップキック。なんてものも見てみたい気持ちがある。

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拷問するもん!『拷問男』

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監督
クリス・サン
主演
ビル・ベイカ

マイケル・トムソン

アリーラ・ジャクエス

あらすじ

シングルファーザーのデレクは、ある日幼い一人娘を無残にも殺されてしまう。復讐を誓ったデレクは、犯人を見つけ出し自宅の地下室に監禁し、娘の復讐のためにあらゆる拷問を行い、犯人に想像を絶する苦しみを与え続ける。一人の優しい父親が、残忍な本性を徐々に表していく・・・。

 

 

感想

私だ。今回紹介するのは映画のタイトルから連想する通りの内容ながら一味付け加えたことであまりにヘビィな痛快リベンジムービーになっている『拷問男』という作品だ。『変態村』や『殺戮職人芝刈男』などと通ずる案件が来てからあらすじを見て5秒で決めたようなタイトルだね。

 

この手の映画は拷問される側、つまり被害者の悲痛な叫びや残酷さに思わず目を背けたくなり、被害者に同情してしまうが本作は前置きに拷問する側である加害者の悲惨で重いストーリーを語ることで、どちらかと言うと加害者側に感情移入してしまう作品になっている。

シングルファーザーで元妻との関係も客観的に見れば悪く、仕事の状況も上手く行かない頭を悩ます事態が続いていく中で、たった一人の愛する娘が何者かに殺されるというトドメまで刺されるのだ。これがあまりに胸が痛む。

 

悲しみに暮れ、絶望していた最中に犯人の目星を付けた主人公が犯人を捉えて家の地下で拘束し閉じ込め、正義の拷問ギルティタイムが幕を開ける。

ここからが凄い。どうやったらそんな事を思い付くのかと疑問の念が頭をよぎるくらい残酷で悲惨な因果応報な数々の拷問パーリーピーポー俗称拷問パリピの誕生だ。

カッターで切り刻むは序の口、指を切り落として痛いの痛いの飛んでけ〜(指)や皮膚にボルトを通して固定し、ぐりぐり回すなど思い付く限りのありとあらゆる手法を使い犯人を人間の形をした肉の何かへと変えていき、隙があれば犯人にお説教をかます極悪非道の正義。

私的お気に入り拷問が、パイプを肛門に突っ込み、そこに有刺鉄線を通してパイプだけを抜き腸をズタズタにしちゃおうぜ拷問。聞いただけで胃がキリキリと痛むぜなんだそれ。

しかし、あの重く辛い前置きによりやられて当然と皮肉にも主人公側の気持ちを察してしまい、一概に拷問を受けている側が可愛そうと思えない。

 

拷問を繰り返すうちに犯人の苦痛に満ちた表情が、主人公にとって快楽へと変わっていき徐々にタガが外れていく姿も見ていて本当に辛くなる。

また、娘を殺した犯人の正体もかなり最悪かつ理不尽で、その正体のせいで見方が変わってくるのだから恐ろしい。

「正義と大罪は紙一重」とよく聞くフレーズだが、本作は正しくそれに振り切っていると思う。

 

ということで『拷問男』一見すると痛々しいだけの内容に思えるが(まあ実際痛々しいが)実は風刺も強く描かれた社会派なストーリーとなっており、その重い内容が突き刺さる痛快リベンジ拷問ホラーの良作だ。悪い奴はもれなくジャスティス拷問。これに尽きる。

それにしてもジャケットの「イダイヨォー…イダイヨオ……」が軽すぎる。

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それは最悪で最高『ミスト』

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監督・脚本

フランク・ダラボン

キャスト

トーマス・ジェーン

マーシャ・ゲイ・ハーデン

ローリー・ホールデン

原作

スティーブン・キング

 

あらすじ

ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」でスティーブン・キングの世界を見事に映画化したフランク・ダラボン監督が、映像化不可能と言われていたキングの傑作中篇「霧」に挑んだ意欲作。激しい嵐が過ぎ去った町に不気味な深い霧が立ち込め、住民たちは身動きが取れなくなってしまう。やがて霧の中に潜んだ正体不明の生物が彼らを襲いはじめ……。原作とは異なる衝撃のラストが全米公開時に大きな話題を呼んだ(映画.com様参照)

 

 

https://www.amazon.co.jp/ミスト-Blu-ray-トーマス・ジェーン/dp/B019GQN33O/ref=sr_1_8?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&keywords=%E3%83%9F%E3%82%B9%E3%83%88&qid=1556622323&s=gateway&sr=8-8

 

感想

ハァ-イ、私だ。平成から令和へと改元されるにあたって紹介できる映画は何かなと考えた時にパッと思い浮かんだのが『ミスト』なので今回はミストを紹介して平成とおさらばしようと思う。そう、平成といえば『ミスト』だね。

 

もう「霧の映画って知ってる?」と聞けば「愚問だな、ブッ飛ばすぞ」と半ギレされるくらいには大体の人には認知されている本作だが、やはりそれ程の認知を勝ち取った魅力はズバリ登場するクリーチャーと原作を改変した衝撃の結末だろう。

なので今回はみんな大好き『ミスト』の魅力を簡潔に語っていく。

 

 

猛烈な嵐に見舞われ外が悲惨なことになっていたある一家、そこで物資を手に入れるため父と息子はスーパーマーケットへと向かうも、突如として現れた周りが見えない濃い霧に辺り一面を瞬く間に覆われ、更にその霧の中には人を襲う“何か”存在している事を知り、見事にスーパーマーケットに閉じ込められどうにかこの覆われた霧と外にいる“何か”を回避して脱出を図ろうとする…。というのが本作の大まかな内容だ。

 

冒頭でも説明した通り本作の魅力は霧の中にいるロマンの塊みたいなクリーチャーの数々だ。スーパーマーケットの裏のシャッターを開け、脱出を図ろうとするとシャッターの隙間から巨大な触手がウネウネと入り込んでくるのがクリーチャーの初お披露目シーンなのだが、その触手が開始のゴングを鳴らすが如く人間の皮膚をバリバリと剥がしたのはどんな触手プレイよりも心を鷲掴みにされテンションが上がり、狂喜乱舞し、チンパンジーみたいに木に登って大きく左右に振ったのは今でも覚えている。多分その手のクリーチャー好きの方々もそれだよ!それ!と同じ状態になったと思う。

 

スーパーマーケットに閉じ込められた人々の不安と恐怖が立ち込める中、霧の中に潜むクリーチャーの見てくれなお披露目会は続き、ガラスに張り付き、スーパーマーケットに籠城する人々に恐怖を煽ってくる巨大な昆虫クリーチャーだったり、その巨大な昆虫クリーチャーを食す鳥型の肉食クリーチャーを追加で披露する事で昆虫クリーチャーよりも上に恐ろしい存在が居ることの怖さと弱肉強食の世界が存在している事を突き付け、人間側を更に絶望へと追い詰めていく。

 

一方、主人公である父はそんな中でも息子を守るために主人公らしくクリーチャーへ怯むことなく果敢に攻撃したり、この場を切り抜けるために模索し、少しでも兆しがあるなら自ら前向きにリーダーとも取れる回りをまとめる行動をしていくのだが、やはり簡単には行かず恐ろしいクリーチャーによって次々とようやく見えた希望をまた絶望の淵へと落とされていく。

 

そういった場面でも私的お気に入りが薬を求め、主人公を中心に数人でスーパーの隣にある薬局へと向かい、薬を探るがそこは凄い凶悪な面構えの蜘蛛クリーチャーによって巣窟化としており、薬どころか死人を出して止む終えずスーパーへと戻る箇所。兎に角ここに登場する蜘蛛クリーチャーが凄い。ケツから強力な酸性の蜘蛛の糸をビームガンみたいに発射して溶かしてくる。更に人間の身体に直接卵を産み付ける最悪すぎる生態を持っており、身体から大量の蜘蛛クリーチャーの赤ちゃんが産まれてくるシーンは目も当てられない地獄のような絵面で、つまりそれは私視点から言うと最高である。やったね、本当に凄いもの見たよ。

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そんな数々のクリーチャーが存在する中で、最も凶悪なモンスターがいる。みんな大好き宗教ババアである。

宗教ババアはスーパーマーケットにいる人たちの何人かを手玉に取り巧みな話術で見事にマーケット内カルト集団を作り出し、霧の中に潜むクリーチャーに生贄を捧げようとする非常に厄介なモンスターだ。

だが問題無い。状況を悪化させて人をイライラさせる才能を持つこの宗教ババアには思わずガッツポーズを繰り出してしまう最後が待っているので、そこは是非その目で確かめて欲しい。

この宗教ババアの存在によって『ミスト』を見た人からは「やっぱり人間が一番怖いよね、へへへ」という意見をよく目にするが、んな訳ない。クリーチャーの方が怖いに決まってる。

 

そして本作が世間的にかなり認知されるようになった要因の一つ、というか最早それが一番の原因といっても過言ではないのが原作とは異なる改変された結末にある。

これ以上スーパーマーケットに籠城は出来ない。助けは待てないと判断した父と息子、その他愉快な仲間たちはスーパーマーケットを出て、車で脱出を図るのだが進んでも進んでも霧は晴れず、それどころかモンハンに登場するシェンガオレン並みに馬鹿デカいクリーチャーにまで出くわしてしまう始末。希望も兆しも見えない中で主人公が出した答え、そしてその先に待ち受ける運命。それによってこの映画を見た視聴者に衝撃を与え、後世にまで語られ続け世間に広まり今や「霧の映画」といえばこの作品がパッと思い浮かぶまで来た。

結末はまだ未見の方のため、と言うよりかは私が初めて見たとき「あーーーーーーーー」となったので同じ目に遭ってほしいという願いを込めて敢えてここでは記さないでおこうと思う。

原作では少し希望を持つ結末だが、果たして映画では………

 

 

ということで『ミスト』割と序盤から一方通行で地獄が続き、よくある「主人公の力で何もかも上手くいく映画」というより「主人公の力で何もかも上手くいこうにもいかない映画」ではあると思う。その他にも人間側にも敵と呼べる存在がいて、死人の数も多いがその手のクリーチャーが好きな方にはグサグサ刺さるクトゥルフ神話的デザインのクリーチャーの数々、SUN値直葬なナイスな絵面など総合的に見ても本作から得るものはプラス点が多いのではないだろうか。

 

因みに『ミスト』は実はドラマ化されているのだが、本作のようなクリーチャー見たさで鑑賞すると思ってたのと違い過ぎて脳内で鈴木雅之の「違う、そうじゃない」が流れる状態に陥る。案の定ドラマはコケてシーズン1で打ち切りになってしまったが予備知識として片隅に置いておくのも良いと思う。

最悪で最高、それがミストである!

 

実は本作に登場するクリーチャーには名前があるのでここでイカれたクリーチャーメンバーを紹介するぜ!

◆テンタクルズ・フロム・プラネット

巨大な触手で人間の皮膚をバリバリ剥がして食す触手プレイが得意

スコーピオン・フライズ

昆虫のような姿をした巨大なクリーチャー。まん丸な目がキュートだが刺されると危険

◆プテロ・バザード

鳥のような見た目のクリーチャー。スコーピオン・フライズを主に食すが、食えると分かれば人間でさえ皮膚を引きちぎってムシャムシャ食べるぞ

◆アラクニ・ロブスター

蟹のようなハサミを持つすごく巨大なクリーチャー。そのハサミで人間を捕まえ攫っていくぞ

◆グレイ・ウィドワーズ

鬼みたい面構えの蜘蛛によく似たクリーチャー。ケツから酸性の蜘蛛の糸を吐き人間を溶かし、更に人間の体内に卵を産み付ける最悪の生態を持つぞ

ベヒーモス

モンハンのシェンガオレンのような巨大なクリーチャー。最早神々しいまである

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その家族の愛は熱く、決して溶けない『ジャック・フロスト/パパは雪だるま』

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監督

トロイ・ミラー

製作

アービング・アゾフ

マーク・キャントン

脚本

マーク・スティーブン・ジョンソン

ティーブン・ブルーム

ジョナサン・ロバーツ

ジェフ・セサリオ

キャスト

マイケル・キートン

ケリー・プレストン

ジョセフ・クロス

 

 

あらすじ

ロックバンドのボーカル、ジャック・フロスト。ある日彼は事故に遭い、愛する妻ギャビーと息子チャーリーを残して逝ってしまったーー。しかし一年後、奇跡が起きる!彼はチャーリーの作った雪だるまとなって復活したのだ。チャーリーに語りかけ、一緒にホッケーやスノボーをし、これまでにない楽しい時間を過ごすジャック。だが一方で、何も知らないギャビーたちは雪だるまに話しかけるチャーリーの姿に不安を抱きはじめ……。(DVDパッケージ裏参照)

 

https://www.amazon.co.jp/ジャック・フロスト-パパは雪だるま-DVD-マイケル・キートン/dp/B0009S8DRU/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&keywords=%E3%83%91%E3%83%91%E3%81%AF%E9%9B%AA%E3%81%A0%E3%82%8B%E3%81%BE&qid=1555236785&s=gateway&sr=8-1

 

感想

ハァイ、ナイストゥ-ミ-トゥ-私だ。桜が咲き、寒さも何処か遠くの方へ行きつつあるこの季節に空気の読まないクリスマスド真ん中なハートフル・ファンタジー『ジャック・フロスト パパは雪だるま』を不意に今回は紹介したい思っちゃったよね。

だが、作品自体は熱い家族のドラマに心の芯からポカポカと温かく感じ、そして切ない内容になっている。

 

 

ロックバンドの卵であり、ボーカルである父親のジャック・フロストとその息子チャーリー、そして妻のギャビーの3人家族はどこから見ても幸せで楽しいクリスマスを過ごしていた。中でも父ジャック・フロストと息子のチャーリーの関係は深く、チャーリーから見てジャック・フロストは一番の父親であり、一番の親友でもあった。勿論父であるジャック・フロストも息子を愛し、吹けばいつでも現れると約束したハーモニカを息子にプレゼントする。

そんな中、クリスマスに家族3人で外出しようとした矢先にジャックに自身のロックバンドのデビューに関わる電話が入り、急遽息子とクリスマスを過ごせなくなってしまう。

しかし、仕事へ向かう最中に「やっぱりクリスマスは家族と過ごさなければいけない」という事に気付いたジャックが再び車で家族の元へ戻ろうとするも、不運にも吹雪に見舞われ事故に遭い亡くなってしまう。

  その一年後のクリスマス、父を亡くした一件以来チャーリーは悲しみに暮れずっと気持ちが沈み、何事にも気力が湧かなくなっていたとき、ふと庭に雪だるまを作り、部屋で父親からの最後のプレゼントであるハーモニカを吹くと作った雪だるまに父ジャックの命が吹き込まれ、雪だるまとなって転生したジャックとチャーリーの奇跡とドラマが始まる……。

 

というのが本作の大まかな概要だ。

側から見ても幸せで楽しい家族を見せられた後に起こる父の事故死は割とショッキングだが、父が雪だるまに転生してからはかなりコミカルに笑える描写を程良く見せてくれる。

たとえば、除雪車に除雪されたり、飼い犬に腕である木の枝を持っていかれたり、動く雪だるまにパニックになる人など随所に盛り込まれている。まあ、テイストを変えれば雪だるまが凄え動くホラーにもなり得る話でもあると思う。

 

 

雪だるまに転生した父親と父親が帰ってきた事を喜ぶチャーリーが互いにこれまで過ごせなかった時間を過ごしていくのだが、雪だるまである父親の雪だるまらしい芸当などで更に記憶に残り思い出深きものにして更新していく様子は非常に温かくハートフルだ。

 

しかし、よくよく考えて欲しい。父親は雪だるまなのだ。人間なんかよりも非常に脆く、太陽の陽に当たれば自身が溶け、気力がダウンし完全に溶ければ当然死ぬ。そう、時間が無い。

冬の寒い時期でしか息子との時間を過ごせず、思い出を残せないという雪だるまという変化球な立場を上手く利用することによって、一つ一つの父親の息子に対する行動や言葉、息子が父親に対する思いや悲しみが何気に胸にグサグサ刺さってくる。

特に息子のチャーリーは地元ホッケーのチームに所属していたが、父の死をきっかけにヤル気を失いチームから脱退していたが、雪だるまの父親からの言葉にまた光を見つけ立ち直り再びチームに戻るくだりから、雪だるまの父親が生前に試合を見にきて欲しいという息子との約束をロックバンドの仕事で見に行けなった一生の後悔を雪だるまに転生してから果たそうとする展開はかなりグッと来る

 

また、息子のチャーリーを目の敵し馬鹿にしてくる悪ガキも存在するのだが、雪だるまの父親を通して思わずガッツポーズする定番だが、ずっと使っている体に馴染んだ寝巻きぐらいの安心感ある熱い展開なども待っているのもまたそれも本作を盛り上げる余興だろう。

 

色々と道のりを経て、生前に出来なかった事を雪だるまになってから息子に精一杯振る舞い、最愛の妻であるギャビーもその存在を信じ、待ち受ける家族の愛が永遠であることを確かなものにするクライマックスは涙なしには終われず、語れない。

クリスマスに起きた小さな奇跡の物語を雪だるまという形で語るお伽話のようなハートフルでファンタジーで温かく、キラキラした物語が詰まった作品になっていると思う。

 

 

めちゃくちゃ余談だが、同じ雪だるまを扱っており英題が本作と同タイトルの殺人鬼が雪だるまになり人々を雪だるま殺法していく本作の対義みたいな作品『キラー・スノーマン』という雪だるま映画も存在するのだが、またそれは別の機会にでも紹介しようと思う。

 

ということで『ジャック・フロスト パパは雪だるま』中身としてはキッズも楽しめ、大人も楽しめるオールラウンダーな作品になっており、傑作とまでは行かないものの家族ドラマの様式美も整っており、十分楽しめる古き良き隠れた作品になっているのではないかと思う。雪だるまに直接声を当てているマイケル・キートンのライブでの生の歌声を聴けるのも楽しめる魅力の一つだろう。

その家族ドラマは燃え上がるほどヒート!そして溶けねえ!

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