その家族の愛は熱く、決して溶けない『ジャック・フロスト/パパは雪だるま』
監督
トロイ・ミラー
製作
アービング・アゾフ
マーク・キャントン
脚本
マーク・スティーブン・ジョンソン
スティーブン・ブルーム
ジョナサン・ロバーツ
ジェフ・セサリオ
キャスト
ジョセフ・クロス
あらすじ
ロックバンドのボーカル、ジャック・フロスト。ある日彼は事故に遭い、愛する妻ギャビーと息子チャーリーを残して逝ってしまったーー。しかし一年後、奇跡が起きる!彼はチャーリーの作った雪だるまとなって復活したのだ。チャーリーに語りかけ、一緒にホッケーやスノボーをし、これまでにない楽しい時間を過ごすジャック。だが一方で、何も知らないギャビーたちは雪だるまに話しかけるチャーリーの姿に不安を抱きはじめ……。(DVDパッケージ裏参照)
感想
ハァイ、ナイストゥ-ミ-トゥ-私だ。桜が咲き、寒さも何処か遠くの方へ行きつつあるこの季節に空気の読まないクリスマスド真ん中なハートフル・ファンタジー『ジャック・フロスト パパは雪だるま』を不意に今回は紹介したい思っちゃったよね。
だが、作品自体は熱い家族のドラマに心の芯からポカポカと温かく感じ、そして切ない内容になっている。
ロックバンドの卵であり、ボーカルである父親のジャック・フロストとその息子チャーリー、そして妻のギャビーの3人家族はどこから見ても幸せで楽しいクリスマスを過ごしていた。中でも父ジャック・フロストと息子のチャーリーの関係は深く、チャーリーから見てジャック・フロストは一番の父親であり、一番の親友でもあった。勿論父であるジャック・フロストも息子を愛し、吹けばいつでも現れると約束したハーモニカを息子にプレゼントする。
そんな中、クリスマスに家族3人で外出しようとした矢先にジャックに自身のロックバンドのデビューに関わる電話が入り、急遽息子とクリスマスを過ごせなくなってしまう。
しかし、仕事へ向かう最中に「やっぱりクリスマスは家族と過ごさなければいけない」という事に気付いたジャックが再び車で家族の元へ戻ろうとするも、不運にも吹雪に見舞われ事故に遭い亡くなってしまう。
その一年後のクリスマス、父を亡くした一件以来チャーリーは悲しみに暮れずっと気持ちが沈み、何事にも気力が湧かなくなっていたとき、ふと庭に雪だるまを作り、部屋で父親からの最後のプレゼントであるハーモニカを吹くと作った雪だるまに父ジャックの命が吹き込まれ、雪だるまとなって転生したジャックとチャーリーの奇跡とドラマが始まる……。
というのが本作の大まかな概要だ。
側から見ても幸せで楽しい家族を見せられた後に起こる父の事故死は割とショッキングだが、父が雪だるまに転生してからはかなりコミカルに笑える描写を程良く見せてくれる。
たとえば、除雪車に除雪されたり、飼い犬に腕である木の枝を持っていかれたり、動く雪だるまにパニックになる人など随所に盛り込まれている。まあ、テイストを変えれば雪だるまが凄え動くホラーにもなり得る話でもあると思う。
雪だるまに転生した父親と父親が帰ってきた事を喜ぶチャーリーが互いにこれまで過ごせなかった時間を過ごしていくのだが、雪だるまである父親の雪だるまらしい芸当などで更に記憶に残り思い出深きものにして更新していく様子は非常に温かくハートフルだ。
しかし、よくよく考えて欲しい。父親は雪だるまなのだ。人間なんかよりも非常に脆く、太陽の陽に当たれば自身が溶け、気力がダウンし完全に溶ければ当然死ぬ。そう、時間が無い。
冬の寒い時期でしか息子との時間を過ごせず、思い出を残せないという雪だるまという変化球な立場を上手く利用することによって、一つ一つの父親の息子に対する行動や言葉、息子が父親に対する思いや悲しみが何気に胸にグサグサ刺さってくる。
特に息子のチャーリーは地元ホッケーのチームに所属していたが、父の死をきっかけにヤル気を失いチームから脱退していたが、雪だるまの父親からの言葉にまた光を見つけ立ち直り再びチームに戻るくだりから、雪だるまの父親が生前に試合を見にきて欲しいという息子との約束をロックバンドの仕事で見に行けなった一生の後悔を雪だるまに転生してから果たそうとする展開はかなりグッと来る
また、息子のチャーリーを目の敵し馬鹿にしてくる悪ガキも存在するのだが、雪だるまの父親を通して思わずガッツポーズする定番だが、ずっと使っている体に馴染んだ寝巻きぐらいの安心感ある熱い展開なども待っているのもまたそれも本作を盛り上げる余興だろう。
色々と道のりを経て、生前に出来なかった事を雪だるまになってから息子に精一杯振る舞い、最愛の妻であるギャビーもその存在を信じ、待ち受ける家族の愛が永遠であることを確かなものにするクライマックスは涙なしには終われず、語れない。
クリスマスに起きた小さな奇跡の物語を雪だるまという形で語るお伽話のようなハートフルでファンタジーで温かく、キラキラした物語が詰まった作品になっていると思う。
めちゃくちゃ余談だが、同じ雪だるまを扱っており英題が本作と同タイトルの殺人鬼が雪だるまになり人々を雪だるま殺法していく本作の対義みたいな作品『キラー・スノーマン』という雪だるま映画も存在するのだが、またそれは別の機会にでも紹介しようと思う。
ということで『ジャック・フロスト パパは雪だるま』中身としてはキッズも楽しめ、大人も楽しめるオールラウンダーな作品になっており、傑作とまでは行かないものの家族ドラマの様式美も整っており、十分楽しめる古き良き隠れた作品になっているのではないかと思う。雪だるまに直接声を当てているマイケル・キートンのライブでの生の歌声を聴けるのも楽しめる魅力の一つだろう。
その家族ドラマは燃え上がるほどヒート!そして溶けねえ!