ジジイからの有難いお言葉と恐怖の贈呈『ゲヘナ 〜死の生ける場所〜』
監督
片桐裕司
脚本
片桐裕司
キャスト
エバ・スワン
ジャスティン・ゴードン
ショーン・スプロウリング
マシュー・エドワード・ヘグストロム
大立昌史
あらすじ
リゾートホテル建設の視察のためサイパン島を訪れた土地開発会社のポリーナとタイラーは、現地コーディネーターのアランとペペ、カメラマンのデイブらとともに候補地のジャングルへと足を踏み入れる。そこで洞穴を見つけ奥へ進んで行くと、突如として不気味な老人が彼らに襲いかかり、驚いたアランは老人を突き飛ばして殺してしまう。5人はその場所に秘められた太古からの呪いに翻弄され、恐ろしい運命へと導かれていく。(映画.com様より引用)
感想
私だ。今回紹介するのは2016年のコミコン限定で上映され、しばらく音沙汰を無くし2018年の夏に東京で上映され、またしばらく音沙汰を無くし、そして「未体験ゾーンの映画たち 2019」でまたも上映されるのチラリズムを経た『ゲヘナ 〜死の生ける場所〜』だ。
2016年のコミコン限定上映から個人的にはかなり注目しており、見たくても見れないジレンマに駆られながら2年の歳月を経てようやく見れたことに凄く感動している。正直待ちわびた!
土地開発会社の社員と現地コーディネーターたちががサイパン島にある旧日本軍の地下壕に足を踏み入れるが、そこには昔ながらの名残りと共に不可解な死体などがあった。一同が困惑する中、干し柿みたいなジジイに遭遇し怯えていたところHoly Shit! 地震が発生。地下壕に閉じ込められてしまった一同が目にしたものは先程まで無かった光景だった。更に恐ろしいものまでが一同を襲う。
というのが今作の大まかな内容だ。
今作の注目すべき点としては監督と脚本を務めた片桐裕司監督にある。彼は様々な映画のコンセプトやクリーチャーのデザインを手掛けており、監督を務めた今作では霊とも呼べるがモンスターとも呼べる怪奇が次々と襲ってくる。
更に今作の『ゲヘナ 〜死の生ける場所〜』のポスターでも体育座りをしているインパクトあるジジイ、そのジジイを演じたのが『シェイプ・オブ・ウォーター』の半魚人や『パンズ・ラビリンス』のペイルマンなど数あるクリーチャー役として活躍するダグ・ジョーンズが担当している。彼の曲芸師の経験と細くて手足の長いシルエットが今作でも大いに活かされ、見事に不気味なジジイが完成されている。
片桐裕司監督の初監督作品でクラウドファンディングによる少ない制作費から様々な苦労と道のりを経て完成された本作だが、その少ない制作費の中で閉鎖された空間というロケーションと監督の経験から活かされたモンスター染みた霊のビジュアルやあちこちに張られている伏線などから魅力ある作品に仕上がっていて楽しめるホラー作品になっていると個人的には思う。
ただただ土地開発会社の社員と現地コーディネーターたちが呪われた地下壕で恐ろしい目に遭うというお話ではなく、所々に張り巡らせた伏線からの推測も楽しめる一部分だろう。
例えば序盤の地下壕で暗い閉鎖空間と状況で怖く仕上がっているが、外に出て陽を浴びたらただの変態に成り下がる全裸の干し柿みたいなジジイが急に襲ってくる場面がある。そこで現地コーディネーターがジジイを突き飛ばしてうっかり大怪我を負わせてしまうもジジイが急に「お前は絶対、死ね」 と言い遺しポックリ逝ってしまう。「死ぬ」ではなく「死ね」だ。こういった一発で違和感の残るような言葉や壁に記された意味深な言葉など伏線が地下壕の中でいろんな形として視聴者にメッセージとして問いかける部分がいくつもある。
そしてその伏線を回収した先に悍ましいオチが待ち受けるのだが、そこは是非皆様の目で拝見して楽しんでいただきたい。
また先程にも説明した通り片桐裕司監督が監修を務めているので霊のビジュアルもかなりインパクトがある。地下壕に足を踏み入れてからダグ・ジョーンズの干し柿ジジイを始めとする凄いブリッジで見る者に恐怖を与えるブリッジ女や子供の姿だが見た目が恐ろしい恐怖のガキンチョだったりと様々だ。しかもその恐怖がヒロインたちが背負ってきた背景に基づく恐怖なのだからヒロインからしたらその恐怖は尋常じゃないだろう。そういったヒロインたちが経験した背景を地下壕の暗闇の中で恐怖として贈呈するのも今作の魅力だろう。
ということで『ゲヘナ〜死に生ける場所〜』万人受けはしないにしろ一概に悪いとは言えず、むしろ十分楽しいホラー作品になっていると思う。上記で説明した以外にも恐怖描写や魅力はあるのだがそれは是非皆様が実際に拝見し見付けて欲しい。(エンドロール後のcパートでもカレーについている福神漬けくらいのお楽しみ要素があったりする)
因みに今作のポスターで「未体験ゾーンの映画たち 2019」公開時のものが一番新しく、販売やレンタルのジャケットになっているのだが、全体的にジジイが明るくなっておりキャッチコピーが「このジジイ、トラウマ級」となっているも特にトラウマ級でも無く、不気味さが薄れているので今回は個人的に好きな東京公開時のポスターを張った。
暗闇で現れるジジイは怖い!